アンタレス付近は思い入れのある被写体ですので、
ごちゃごちゃ余計なことを書いてみます。
お時間のある方は、お付き合いいただければと思います。
1.きっかけ
8月号の天文ガイドに掲載していただいたアンタレス付近ですが、
もともとの構想は昨年3月のテカポ遠征のときにデジカメで撮影したアンタレス付近の画像を見て、
「次は冷却CCDで!」というのがきっかけです。
社会人になったら冷却CCD、と思っていましたが、
はっきり言って、大きく電力を使う機材は
海外遠征では邪魔なだけです。
QHY22を選択した理由も、「消費電力が少ない」
「重さが軽い」の2点のみ。
最初からNZで使うつもりでした。
2.QHY22と撮影光学系について
購入後何度か使ってみて、確かにノイズは少なく、
バッテリーの減りを見るに、消費電力は少ないみたいでした。
また、チップの小ささが功を奏して、71FLと7866の組み合わせは
周辺減光も目立たず、APS-Cデジイチとはずっと相性が良いようで。
F3.7の明るさもあり、メインシステムとして運用することとします。
AstrodonのLRGBフィルターが届くのが遅かったのがあって、
仕方なくハイブリッドコンポジットに手を出しましたが、これは
結果的によかったと思っています。
71FL+7866はそこまでシャープではないですし、
ハロが少し残るのは分かっていたので、ハロの少ない
45ED+7885+UIBAR-ⅢのRGB画像とは良いマッチングだったと思います。
3.QHY22の問題点と解決策
ただ、600万画素という画素はどう考えても少ないんですよね。
Webでは十分ですが、プリントするとどうしても画素数の少なさが
目立っていました。
通常のLRGBフィルタの撮影で大きくRGBでピント位置が移動するのも
大きな問題でした。フォーカサーなしでRGBでいちいちピントを合わせる気になりません。
さらに、その時点でアンタレス付近を撮影するためにはチップサイズが小さいため
手持ちの光学系では入りきらないことは分かっていました。
そこで、モザイクの出番です。
RGBはデジイチで撮影するのでフィルターごとのピント位置は気にしなくていいですし、
LはQHY22の低ノイズのおかげで1枚でもかなり滑らかなため、4枚もあれば
十分に見られる画像になってくれました。
もちろん、よっちゃんさんのカラーアシストで星の色を補うということも
可能ですが、71FL+7866が大してシャープではなく、効果が薄い割に
手間が増えることと、モザイク枚数を増やせば星が小さくなりますから、
微光星には色が乗らない(または偽色)ものの、目立たなくすることができます。
日本でのテストから、4枚モザイクでは不十分で、9枚欲しいということに
なりました。
そうなると、10分×4枚×9枚で、360分、6時間必要となります。
4.実際の撮影
テカポの予報が芳しくなかったため、一応4枚の妥協構図も
作製してはありました。
NZに到着してからも、最後まで4枚か9枚モザイクか
ぎりぎりまで迷いました。
6時間を1日で撮り切るのは難しいわけで、2日晴れてくれるか、
晴れたとしてもシーイングの影響で星の大きさが異なる可能性があります。
Scotch on the Rock天文台の天候が良かったことと、次の日の天気も
期待できそうだったこと、「NZまで来て、妥協しているようじゃ話にならない。
たとえ未完成になってしまったとしても、それはそれで仕方ない」
という思いから、9枚モザイクの決断をしました。
おかげさまでScotch on the Rock天文台で5カット、
次の日のマウントクックで4カットを撮り切り、何とか完成にこぎつけます。
撮影中はとにかく、ピント位置の移動に気を使いました。
何度か撮影を中断し、Bahtinovマスクでピントを確認しました。
温度変動が小さかったことと、71FLが温度によるピント移動が少なかったのが
功を奏しましたね。
それと、2日間でシーイングの変動が小さかったのも助かりました。
お蔭で不自然さがなく繋がってくれました。
結局そのあとも2日は快晴でしたから、何とか撮りきれたと思いますが
シーイングに関しては分かりませんですからね。
5.最近思うこと
あまりいい表現ではないですが「目的のために手段を選ぶ必要はない」
ということです。
高価な機材を使おうが、テカポで撮影しようがその人の勝手ですからね。
最終的な成果物、作品で評価されるべきでしょう。
確かに、テカポまで行って、12時間分も露光したら
このくらいの仕上がりになるのは当たり前です。
この言い訳できない状況でしたが、
現状出せるものはある程度出せたんじゃないかと。
1年前にイメージしていた作品を、まずまずイメージ通りに
トレースできたのは収穫でした。
南天の天体に関しては、本州で撮影する意味はもはや無いと
思っています。
透明度と天候が良く、四国や九州の高標高地からなら
話は違うと思いますが。
いくら苦労しようが、良い結果が得られる方法がほかにある以上
ダメなものはダメだと思います。
撮影するなら、とにかく透明度の良い夜を選ぶことが第一で、
次いで空の暗い場所へ行くこと。
ただ、そんな夜はもう二度とないかもしれません。
いくら天気が悪い、透明度が悪いと嘆いたところで
空の状態は変わりませんからね。
今後ますます悪化していくでしょう。
6.今後の撮影の方向性
えっちゃんさんがオーストラリアでのリモート天文台の
記事を書いていらっしゃいましたが、選択肢としては
有力ですよね。
もう日本を見限る時期が来ているのではないでしょうか。
ただ、南天以外の天体について、特に関東の冬は
昨年過ごしていて思いましたがまだまだチャンスがあると思います。
あれだけ透明度良く晴れてくれるのなら、シーイングを除けば
十分に勝負になりますね。
被写体の高度の問題もあるので、南天が必ずしも
有利とはいえないのもポイントです。
私はしばらくは日本での撮影に専念します。
ただ、その結果もう日本はダメだ、となった場合は
どうすればいいか、考えながら、ですね。
ごちゃごちゃ余計なことを書いてみます。
お時間のある方は、お付き合いいただければと思います。
1.きっかけ
8月号の天文ガイドに掲載していただいたアンタレス付近ですが、
もともとの構想は昨年3月のテカポ遠征のときにデジカメで撮影したアンタレス付近の画像を見て、
「次は冷却CCDで!」というのがきっかけです。
社会人になったら冷却CCD、と思っていましたが、
はっきり言って、大きく電力を使う機材は
海外遠征では邪魔なだけです。
QHY22を選択した理由も、「消費電力が少ない」
「重さが軽い」の2点のみ。
最初からNZで使うつもりでした。
2.QHY22と撮影光学系について
購入後何度か使ってみて、確かにノイズは少なく、
バッテリーの減りを見るに、消費電力は少ないみたいでした。
また、チップの小ささが功を奏して、71FLと7866の組み合わせは
周辺減光も目立たず、APS-Cデジイチとはずっと相性が良いようで。
F3.7の明るさもあり、メインシステムとして運用することとします。
AstrodonのLRGBフィルターが届くのが遅かったのがあって、
仕方なくハイブリッドコンポジットに手を出しましたが、これは
結果的によかったと思っています。
71FL+7866はそこまでシャープではないですし、
ハロが少し残るのは分かっていたので、ハロの少ない
45ED+7885+UIBAR-ⅢのRGB画像とは良いマッチングだったと思います。
3.QHY22の問題点と解決策
ただ、600万画素という画素はどう考えても少ないんですよね。
Webでは十分ですが、プリントするとどうしても画素数の少なさが
目立っていました。
通常のLRGBフィルタの撮影で大きくRGBでピント位置が移動するのも
大きな問題でした。フォーカサーなしでRGBでいちいちピントを合わせる気になりません。
さらに、その時点でアンタレス付近を撮影するためにはチップサイズが小さいため
手持ちの光学系では入りきらないことは分かっていました。
そこで、モザイクの出番です。
RGBはデジイチで撮影するのでフィルターごとのピント位置は気にしなくていいですし、
LはQHY22の低ノイズのおかげで1枚でもかなり滑らかなため、4枚もあれば
十分に見られる画像になってくれました。
もちろん、よっちゃんさんのカラーアシストで星の色を補うということも
可能ですが、71FL+7866が大してシャープではなく、効果が薄い割に
手間が増えることと、モザイク枚数を増やせば星が小さくなりますから、
微光星には色が乗らない(または偽色)ものの、目立たなくすることができます。
日本でのテストから、4枚モザイクでは不十分で、9枚欲しいということに
なりました。
そうなると、10分×4枚×9枚で、360分、6時間必要となります。
4.実際の撮影
テカポの予報が芳しくなかったため、一応4枚の妥協構図も
作製してはありました。
NZに到着してからも、最後まで4枚か9枚モザイクか
ぎりぎりまで迷いました。
6時間を1日で撮り切るのは難しいわけで、2日晴れてくれるか、
晴れたとしてもシーイングの影響で星の大きさが異なる可能性があります。
Scotch on the Rock天文台の天候が良かったことと、次の日の天気も
期待できそうだったこと、「NZまで来て、妥協しているようじゃ話にならない。
たとえ未完成になってしまったとしても、それはそれで仕方ない」
という思いから、9枚モザイクの決断をしました。
おかげさまでScotch on the Rock天文台で5カット、
次の日のマウントクックで4カットを撮り切り、何とか完成にこぎつけます。
撮影中はとにかく、ピント位置の移動に気を使いました。
何度か撮影を中断し、Bahtinovマスクでピントを確認しました。
温度変動が小さかったことと、71FLが温度によるピント移動が少なかったのが
功を奏しましたね。
それと、2日間でシーイングの変動が小さかったのも助かりました。
お蔭で不自然さがなく繋がってくれました。
結局そのあとも2日は快晴でしたから、何とか撮りきれたと思いますが
シーイングに関しては分かりませんですからね。
5.最近思うこと
あまりいい表現ではないですが「目的のために手段を選ぶ必要はない」
ということです。
高価な機材を使おうが、テカポで撮影しようがその人の勝手ですからね。
最終的な成果物、作品で評価されるべきでしょう。
確かに、テカポまで行って、12時間分も露光したら
このくらいの仕上がりになるのは当たり前です。
この言い訳できない状況でしたが、
現状出せるものはある程度出せたんじゃないかと。
1年前にイメージしていた作品を、まずまずイメージ通りに
トレースできたのは収穫でした。
南天の天体に関しては、本州で撮影する意味はもはや無いと
思っています。
透明度と天候が良く、四国や九州の高標高地からなら
話は違うと思いますが。
いくら苦労しようが、良い結果が得られる方法がほかにある以上
ダメなものはダメだと思います。
撮影するなら、とにかく透明度の良い夜を選ぶことが第一で、
次いで空の暗い場所へ行くこと。
ただ、そんな夜はもう二度とないかもしれません。
いくら天気が悪い、透明度が悪いと嘆いたところで
空の状態は変わりませんからね。
今後ますます悪化していくでしょう。
6.今後の撮影の方向性
えっちゃんさんがオーストラリアでのリモート天文台の
記事を書いていらっしゃいましたが、選択肢としては
有力ですよね。
もう日本を見限る時期が来ているのではないでしょうか。
ただ、南天以外の天体について、特に関東の冬は
昨年過ごしていて思いましたがまだまだチャンスがあると思います。
あれだけ透明度良く晴れてくれるのなら、シーイングを除けば
十分に勝負になりますね。
被写体の高度の問題もあるので、南天が必ずしも
有利とはいえないのもポイントです。
私はしばらくは日本での撮影に専念します。
ただ、その結果もう日本はダメだ、となった場合は
どうすればいいか、考えながら、ですね。