Shooting Stars - 北海道の星空の元で

天体写真を中心としたブログです。

2017年08月

皆既日食処理方法解説その4 Photoshopによる仕上げ

今回で最終回、Photoshopで仕上げをしていきます。

1)ローテーショナルグラディエントの副作用の除去
ローテーショナルグラディエントの性質上、どうしても下写真のように
月の縁がギザギザになったり、プロミネンスが漏れだしたりとアーティファクトが出来てしまいます。
94c54600.jpg


Photoshopを開き、ローテーショナルグラディエント処理した画像を下、
していない画像を上に配置します。
このために、デジ現直後の画像を保存する必要がありました。
※デジ現後やローテーショナルグラディエント処理後に画像をいじるとうまくいきません。
そのまま保存するようにしてください。

デジ現後の画像で、楕円形選択ツールを起動、shiftを押しながらドラッグして
月の大きさと全く同じ円を作成します。
十字キーで位置を動かせますし、右クリックから「選択範囲の変形」を押すと
大きさを微調整できます。

1e8d4317.jpg


この状態で、レイヤーウインドウの「レイヤーマスクを追加」ボタンを押すと、選択範囲=月以外
がマスクされます。
つまり、月はデジ現後の画像、それ以外はローテーショナルグラディエント処理後の画像となり、
ローテーショナルグラディエントの副作用を除去できます(完全ではないですが)。

もし位置があっていなかったりすると失敗します。その場合には位置を合わせください。

2)Topaz Adjustによる疑似HDR処理
これはコロナの処理では普通はやらないかと思います。
1)の処理後にレイヤーをを統合し、PhotoshopのプラグインであるTopaz Adjustを起動します。
0e9feafd.jpg


COLLECTIONはHDR COLLECTIONPRESETSはダイナミックポップ2を選択します。
これにより、一気にコントラストが上がるかと思います。

肝となるパラメータは「適応露光」と「境界」。
適応露光を大きくすると、HDR効果が大きくなります。
境界を大きくすると、より大きな構造に対してHDR効果が掛かり、輝度差が小さくなります。
言葉で説明するより、スライダーを動かしてみたほうがわかりやすいかと思います。

今回は適応露光0.80、境界18としました。
この辺は好みですので、いろいろ探索してみてください。

同じような効果をもつプラグインとして、Nik Collectionがあります。
HDR Efex Pro 2でいいはずなんですが、使ったことがないので良くわかりません。。。
最近の天ガに詳細な解説があったかと思いますので、そちらをご参照ください。


終わりに
基本的な処理は以上です。
この後、カラーバランスを整えたり、まあ「ごにょごにょ」やって完成としました。

ポイントはTopazかと思いますが、今ではこの手の処理は
直焦点写真では一般的なものになりました。
ただ、日食など天文現象の画像処理ではそこまで適用されていないのかもしれません。

あくまで感覚ですが、天文現象派と直焦点派は被らないような気がします。。。
私のようなハイブリッドは少数派なのでしょうね。

ま、それはさておき。
もう皆既日食の画像処理は終わった方が多いかと思いますが、ご参考になりましたら幸いです。


皆既日食処理方法解説その3 デジ現~ローテーショナルグラディエント

さてさて、ここからはステライメージの処理に移ります。

1)加算コンポジット
これは簡単。位置合わせをせず、単純にコンポジット後の全画像を
加算で合成するだけです。位置合わせのチェックを外し、合成方法を加算にしてください。



2) デジタル現像
加算後はこんな画像になりますが、心配せず。


レベル補正で飽和点のスライダーを右へもっていけば階調が復活します。
カラーバランスもレベル補正でざっくり合わせました。

で、適当にデジタル現像を掛けます。私はこのくらいにしました。
c800cf77.jpg


この時点の画像をコピーして保存します(←重要!Photoshopの処理で使用します)

3) ローテーショナルグラディエント処理
ツール→ローテーショナルグラディエントを選択します。

0a415813.jpg


十字線が表示されていますが、この交点と太陽中心を合わせます。
「中心線表示」をオンにし、十字線を動かしてください。
これが一致していないと、うまく処理がされません。

肝は「回転角」と「強度」。
強度はそのままの意味ですが、回転角は大きくすると大きな流線構造が、小さくすると小さい流線構造が
強調されるようです
また、コロナ部分の輝度も回転角を大きくしたほうが強調されるようです。

今回は迫力重視ということで、回転角1度、強度1.0でまずは大きな構造を強調し、
そのあとに回転角1度、強度1.0で微細な構造を強調するようにしました。

強度の値を大きくすると、急激に背景が荒れます。
また、アンシャープマスクと同じで、原理的に黒縁が発生しますので
それを抑えるための黒縁抑制を100%に設定しました。

今回は使用しませんでしたが、しきい値と緩衝幅をうまく使うと
ノイズを増やさずに流線構造を強調できると思います。
この辺は各自工夫してみてください。

処理が終わりましたら、16bitTiffで保存してステライメージでの処理は終了です。
ここからはPhotoshopで処理します。


皆既日食処理方法解説その2 下準備

1) フラット補正
面倒なのはわかりますが、まずはこれをやらないと始まりません。
少なくとも、下記の4条件であてはまるものがあったらやったほうがいいですね。
私のシステムはすべて該当します。センサーのごみは個人的な問題ですが。。。

 ・フルサイズ
 ・NikonのFマウント
 ・周辺減光が大きい光学系
 ・センサーにごみがついている

実際のフラットフレームはこんな感じでした。
63e9c77c.jpg


この程度なら補正しなくていいようにもみえますが、レベル補正を掛けるとこうなります。
4db01ea3.jpg


単純に周辺が暗くなっていくわけではないのがわかると思います。
グラデーションマスク等を使えば補正は不可能ではありませんが、ごみの問題は
解決しません。

とはいえ、フラットは撮影していない方も多いかと思います。
私も時間がなく、現地でもホテルでも撮影できなかったので
帰ってきてから自宅で撮影しました。

フラットはタブレットの画面を使い、色合わせは下記のアプリを使いました。
色見本 -Color Palette-

これで色合いと輝度を合わせればOKです。
1/2秒と1/8秒露光用にそれぞれ64枚撮影し、RAP2でフラット補正しました。
DNGに書き戻し、フラット処理してない画像もあわせてCameraRawでRAW現像しました。

ただ、Nikon機との相性が悪いのか、どうもCameraRawで読み込むとカラーバランスが
おかしくなります。DNGコンバーターの設定も大丈夫なはずなのですが。。。

それはさておき、Raw現像時はパラメータは基本はいじりません。
デフォルトでシャープ処理が入りますが、それは”0”にしました。
カラーバランス等はいじってしまうと後で加算コンポジットしたときにおかしくなる可能性があるので、
やめたほうがいいでしょう。
(今回はフラット補正のせいでカラーバランスが崩れたので、ある程度補正しました)

全画像を16bitTiffで書き出しして終了です。

2) シグマクリップしつつコンポジット
同じ露光時間の画像ごとにコンポジットします。
もし赤道儀を使っていて、かつ極軸がちゃんとあっていれば位置合わせは不要です。
また、CCDStackで位置合わせできるか試してみましたが失敗しました。
位置合わせが必要な場合は手動でやるしかないでしょう。

今回は暗いうちから準備して極軸バッチリでしたので、位置合わせはせずに
シグマクリップしつつコンポジットしました。

理由としては、太陽はほぼ静止しているとみなせますが、月は動きます。
日食なんで当たり前ですけれど。
また、今回は皆既食帯の縁で撮影していたので、太陽の光が漏れていたんですよね。
シグマクリップすればそれらの影響を除けると思ったので、今回はやってみました。

やり方としては、露光時間が同じ画像をCCDStackに読み込み、
位置合わせ(Registar)はせず、NormalizeとDeta Rejectだけを行います。
そもそもCCDStackって何でしょう?という方はこちらをどうぞ。UTOさんのブログです。

んで、Data RejectではPossion Sigma Rejectを選択しました。
パラメータはこちら。
今回は同一露光の画像は6枚でしたので、ちと枚数が足りない気もします。
出来れば8枚はほしいですね。


ステライメージだとコンポジットの画面右下の「範囲外の値を除外」がシグマクリップ機能です。
CCDStackは排除するピクセルが見えるんでわかりやすいんですけれどね。。。



各露光時間の画像を同様にコンポジットし、16bitTiiffなりFitsなりで保存します。

皆既日食処理方法解説その1 はじめに

早いもので皆既日食からもう1週間。流石に時差ボケも疲れも抜けました。

処理結果が予想以上に好評だったことと、同行したKさんとの約束もあり
処理方法を公開したいと思います。

注1:この方法が正しいというつもりは毛頭ありません。使えそうな部分だけ活用ください。
注2:日食では割と一般的な方法で、私のオリジナルではありません。ご存知の方も多いかと思いますが、
   参考になれば幸いです。

用意するもの
・多段階露光した皆既日食の画像セット
 私は1/2000~1/2秒まで、6セット使用しました。
 強力な画僧処理ですので、1セットだけだと破綻すると思います。
 また、固定撮影or極軸があっていなくて追尾されていない画像だとコンポジットの際に問題が生じます。

・フラット処理できるソフト
 今回はRAP2を使用し、DNGに書き戻しました。
 なぜか今回はCCDStackではうまくいかなかったです。ステライメージでも可能です。

・コンポジットできるソフト、できればシグマクリップできるもの
 CCDStackとステライメージはどっちもできますが、CCDStackのほうがやりやすいかと。
 PixInsightもできるのかも。。。シグマクリップはできなくてもいいです。

・加算合成およびデジタル現像できるソフト
 次のローテーショナルグラディエント処理でも使えるので、ステライメージがいいと思います。
 CCDStackやPixInsightでも可能かとは思います。

・ローテーショナルグラディエント処理できるソフト
 ステライメージだと簡単です。PSなどほかのソフトでも可能ですが面倒です。
 今回はステライメージを使用します。

・疑似HDRできるソフトorPSのプラグイン
 Topaz AdjustやNik Collectionなどです。
 今回はTopazを使用します。

手順概略
フラット補正(長時間露光のみ)
 ↓
シグマクリップしつつコンポジット
 ↓
全画像を加算で合成、デジタル現像
 ↓
ローテーショナルグラディエント処理
 ↓
疑似HDR処理
 ↓
仕上げ

以降、各手順について詳細を解説します。

皆既日食最終処理結果

フラットをちゃんと撮影しつつ、処理してみました。
結局あまり変わりませんでしたね。。。

5eccfcc1.jpg


撮影場所
アメリカ合衆国 アイダホ州 Black Canyon Dam

撮影時刻
2017/08/21 11h26m27s~(LST)

カメラ
Nikon D810A(ISO400
1/2000, 1/500. 1/125. 1/30. 1/8, 1/2 ×6枚ずつ(合計36枚)
エクリプスナビゲータ3 で自動撮影

望遠鏡
ミニボーグ71FL+1.4xテレコンバーターDG(560㎜F7.9)

ガイド

赤道儀:Kenko スカイメモR(ノータッチ、恒星時追尾)

処理
RAP2でフラット処理
CCDStack2.94(CCDIS/p)によりコンポジット、シグマクリップ
StellaImage6.5でデジタル現像、ローテーショナルグラディエント処理(2度、1度)
PhotoshopCC、Topaz adjustで最終調整
太陽部分は1/2000の露光を使用

画像処理法については後程アップしようかと思います。

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